勤務医の苛酷な労働環境

私立の中小総合病院では、毎月数千万円という赤字経営の所が少なくない。良心的な病院ほど儲けの少ない医療分野を切り捨てられず、罹患者が少数しかいない病気の患者のためにも設備を整え献身的に医療を施している。
最も病院の経営を圧迫するものは人件費である。中でも、医師の給与は、他の職種に比べて高額とならざるを得ない。それで赤字の病院は、医療に必要な数の医師を十分確保できず、医師不足のため少数の医師が激務をこなすことになる。 勤務医は、週6日以上の日勤のほか、毎月5~8回の夜勤をこなさなければならない。
看護師と異なり、医師の夜勤は仮眠が許されるため、夜勤明けも日勤をこなさなければならない。しかし、夜勤中に起こされること無く朝を迎えられることはほとんどない。食事は立ったままコンビ二弁当で済ませるしかない日も珍しくないようだ。
毎月の残業は、軽く200時間を超えることも少なくない。気がつくと、2ヶ月以上一日の休みもなく連日働いていることに気付くこともあるようだ。こうして勤務医は、慢性的な睡眠不足に悩まされ続けるのだ。 彼らは、常時10人以上の患者の主治医を務め、担当の患者に急変があれば、帰宅途中で病院に引き返さなければならないこともある。
こうした赤字病院の勤務医の平均的な年収は、せいぜい1000万円から1500万円である。多少夜勤が増えても税金増額分に消えてしまい、収入が増える実感がない。当然だが、このような劣悪な労働環境の赤字病院には、若い医師が寄り付かない。たとえ赴任してもすぐ辞めて、もっと労働環境の良い病院に移ってしまう。こうして、赤字の民間総合病院では医師の高齢化が進み、激務が医師の心身に与えるダメージは深刻なものとなり、医療過誤の遠因となるのだ。